• ホーム
  • 歯科界との血液感染リスク共通点

歯科界との血液感染リスク共通点

 

「感染症予防歯科技工士講習会」を受講して

橋本理美容商事株式会社

 2023年10月29日(日)、神戸市産業振興センターにて行われた「感染症予防歯科技工士講習会」を受講する機会を得ました(図1)。この講習会は、「歯科医療関係者感染予防講習会」の一環として毎年全国各都道府県で開催されるものです。
 講師は、口腔微生物研究の第一人者であられる東京歯科大学名誉教授の奥田克爾先生と、長年にわたり歯科技工界の感染対策の普及を牽引してこられた広島大学客員講師で日技認定講師の大西正和先生でした。

1.日本歯科医師会・日本歯科技工士会から授与された修了証書

1)  奥田克爾先生には、ウイルスや細菌が増殖する条件とその対策方法を教えていただきました。この中で特に印象に残ったお話のひとつに、浴室、加湿器、濡れたタオルなど私たちの日常生活におけるレジオネラ菌の感染拡大があり、具体的な事例を挙げてご説明くださいました。レジオネラ菌は、消毒用エタノールを入れた容器の底にも増殖する可能性があるとのことです。これは当業界でも起こり得ると思われ、気が引き締まる思いで聞き入りました。
 なお、この対策としては、使用後、ただちに消毒液を捨て、ブラシで洗い乾燥させることで、菌の増殖を抑制できるとのことです。
 今後、当業界においても、このようなひとつひとつの感染対策を着実に実行して行かなければならないと改めて認識しました。

2) 大西正和先生の「歯科技工士の現場での具体的な感染対策」は、歯科界と理美容界の血液感染リスクに共通点があるため当業界にとって学ぶべきことが多くありました。
 大西先生が述べられた感染対策に関する2つの基本理念は次の①,②です。
①「スタンダードプリコーション(=全ての人が何らかの感染者と仮定した感染対策)。
②「ZONE(=確実に汚染を封じ込めるための仮想区域ごとの感染対策)。

 このような基本理念を踏まえたうえで、大西先生が「消毒」と同等に重要視された消毒の前処理が「洗浄」です。これは、対象物に付着している目に見えない血液や組織片などのタンパク質などをあらかじめ除去する作業であり、「一次洗浄」と呼ばれています。歯科界ではこの作業に「タンパク質分解酵素」が含まれた洗浄剤が使用されており、この様子がスライドで紹介されました(図2)。

2.歯科領域でのタンパク質分解酵素系洗浄剤の使用例(当日のスライドから)

 なお、ここで使用する製品は、弊社が取り扱っております「ネオアイテムプロ」と、ほぼ同一の組成であり、その性能も同等とのことです。
 そのほか、大西先生のお話は、「手指洗浄の重要性」、「B型肝炎ワクチンの必要性」、「多孔質物質に対する滅菌消毒の難しさ」など具体的なものであり、当業界の感染対策を推進する上での多くの示唆を得ることができました。
 たとえば、顔剃り中にカミソリに付着したヒゲや皮膚片などを取るスポンジ・マットは、カミソリやハサミなどと同様に感染対策が必要です。 しかし、スポンジ・マットは多孔質で消毒が難しく感染源になる可能性があるため、「使い捨てペーパー」への切り替えは早急に検討すべきであると思われます。

 奥田克爾先生には「微生物の基礎知識」を分かり易くご説明いただき、大西正和先生には「歯科技工界と同等の感染対策が理美容業界にも必要である」ことを学ばせていただきました。
 微力ながら、私どもの役目は理美容師様に「医療・歯科従事者と同様の感染対策の必要性」をお伝えし、一人でも多くのお客様と理美容師様を感染症からお守りしていくこでございます。
 末文ながら、このたび専門分野が異なる私どもにお声を掛けてくださいました大西正和先生に深謝申し上げます。